舞鶴市がChromebook+Google Workspaceで全庁DX!コストは従来の約5割、A4用紙は38%削減を実現【政令市・中核市CIOフォーラム報告】
どうも、自治体でのChromebook活用事例はとことんウォッチしているタケイ(@pcefancom)です。
日経BPが主催する「政令市・中核市・特別区CIOフォーラム」で、京都府舞鶴市のChromebook全庁導入事例が報告されました。
報告者は舞鶴市政策推進部の吉崎豊デジタル推進室長。Google WorkspaceとChromebookによる働き方改革と生産性向上の取り組みについて、かなり具体的な数字やリアルな課題も含めて語られており、非常に興味深い内容です。
自治体でChromebookの導入を検討している方には参考になるはずなので、要点をまとめて紹介します。
参照元:日経BP 政令市・中核市・特別区CIOフォーラム レポート
導入の背景|Windows端末の限界とシャドーITの危機感
舞鶴市がChromebook導入に踏み切った背景には、コロナ禍を経て顕在化した複数の課題がありました。
まず、SaaSの利用を要望する職員の増加やWeb会議などインターネットアクセスの需要が急拡大する中で、Windows端末のパフォーマンス不足が深刻化していたこと。インターネット仮想化環境の使い勝手の悪さ、ファイルサーバーやメールサーバーの容量不足なども重なり、業務に支障をきたす状態だったといいます。
さらに深刻だったのが「シャドーIT」によるセキュリティリスクの増大です。使いにくい環境に耐えきれなくなった職員が、個人端末や未承認のサービスを業務に利用するケースが出てきていたわけですね。これはどこの自治体でも抱えうる問題ですが、放置すればセキュリティ事故につながりかねません。
もうひとつ、舞鶴市ならではの事情もあります。隣接する福井県高浜町には関西電力の原子力発電所があり、大災害時には「着のみ着のままで避難する必要がある」とのこと。LGWAN環境の確保が難しい状況下で「インターネットだけでどうにかしたい」というBCP(業務継続計画)の観点からの切実な思いがあったそうです。
導入の決め手|αモデルからの脱却とPC一斉更新のタイミング
舞鶴市では2022年度に、セキュリティ対策を強化しながらネットワーク環境を「αモデル」から「α’モデル」に移行しています。
そして2024年度、事務用Windows端末が一斉更新の時期を迎えました。吉崎氏はこのタイミングを逃さず、「安全で機動力のある環境への切り替え」を検討。その結果たどり着いたのが、Google WorkspaceとChromebookという選択でした。
個人的に、PCのリース更新タイミングをDXの好機として捉えたのは見事だなと感じました。
検討開始からわずか1年で全庁展開
導入のスピード感がすごいです。
2024年4月に検討を開始し、わずか2か月で意思決定。同年9月に事業者を選定し、2025年には全庁展開と、1年足らずで実運用にこぎ着けています。
吉崎氏は「プロジェクトチームを立ち上げて検討を重ねて意思決定を仰ぐのが通例だが、短期間に一気に実行したことが結果的には功を奏した」と語っています。
ただし、全庁一斉に利用環境を変えるのは混乱が予想されるため、2024年12月からWindows端末のままGoogleアカウントを配布。サービスの利用に慣れてもらう移行期間を設けるなど、段階的な配慮もしっかり行っています。
さらに、導入済みのクラウド型ノーコード/ローコードツール「kintone」(サイボウズ製)とNotebookLMを活用したFAQ向けチャットボットも作成。電話による問い合わせを減らしつつ、丁寧な回答ができる仕組みを整えたそうです。
kintone+NotebookLMでFAQチャットボットを作るというのは、なかなか面白い組み合わせですよね。Google製品だけに閉じず、既存のツールも柔軟に活用しているのが印象的です。
セキュリティ対策|Chrome Enterprise Premium+EDR+NDRでXDR環境を構築
セキュリティ面の取り組みも非常に充実しています。
舞鶴市ではChromebookをメインに運用していますが、従来のドキュメントファイルとの互換性を考慮して各課に1台ずつWindows端末を残しています。つまり、ChromebookとWindows端末がLGWAN接続系で共存する構成です。
セキュリティのポイントは以下の通りです。
Windows端末を含め、標準ブラウザーをChromeブラウザーに統一。Chrome Enterprise Premium(CEP)を利用して、エンドポイントのセキュリティを強化しました。
セキュリティリスクが相対的に大きいWindows端末に対してはEDR(Endpoint Detection and Response)も追加で導入。2016年から利用しているNDR(Network Detection and Response)と合わせて、エンドポイント・ネットワーク・クラウドのデータを統合的に監視するXDR(Extended Detection and Response)環境を実現しています。
製品にはトレンドマイクロの「Trend Vision One」を採用したとのこと。
ChromeOS自体のセキュリティの堅牢さに加えて、残存するWindows端末にはEDRで多層防御。さらにネットワーク全体をNDRで監視して、全体をXDRで統合するという徹底ぶりです。自治体のセキュリティ対策としてはかなり高水準だなと感じました。
導入効果|「どこでもオフィス」の実現とA4用紙38%削減
導入後の効果として、吉崎氏は具体的な変化をいくつも挙げています。
まず、業務場所を選ばない「どこでもオフィス」が実現したこと。答弁書などの文書をリアルタイムで共同編集できるようになり、全職員が自端末からWeb会議に参加できるなど、機動力が大幅に向上しました。
クラウドサービスであるため、長年の課題だった保存データ容量の逼迫も解消。ファイルサーバーやメールサーバーの容量不足に悩まされることがなくなったわけです。
具体的な成果として報告された数字も紹介します。
Web会議「Google Meet」の利用と文字起こし・共同編集が庁内に定着。A4判用紙の購入枚数は2024年と2016年の比較で約38%も削減されたそうです。場所を選ばない働き方による職員の満足度も向上しているとのことでした。
A4用紙38%削減は相当なインパクトですよね。ペーパーレス化は多くの自治体で目標に掲げていますが、ここまで具体的な数字で成果を示せている事例はなかなかありません。
一方で、吉崎氏は「クラウドにデータを保有し続けることになるので、情報公開請求などへの対応をしっかり考えておく必要がある」とも指摘しています。メリットだけでなく、クラウド移行に伴う新たな課題にもきちんと向き合っている姿勢が好印象です。
課題も正直に報告|オフィス文書の互換性問題
導入後の課題として顕著に表れているのが、外的要因によるオフィス文書の互換性問題です。
吉崎氏によると、「国からの調査票などのExcelファイルに多く見られる事象であり、固定されたレイアウトの強要やマクロ機能、複雑な数式のために表示の崩れやファイルとして機能しないトラブルが発生する」とのこと。
この問題に対して、ChromeOS環境でMicrosoft Officeを動作させる「Cameyo by Google」などのアプリケーション仮想化プラットフォームを研究中だそうです。
ただし、吉崎氏は「対症療法だけでは不十分であり、そもそもファイルをキャッチボールする習慣を止めるなどの検討が必要」とも述べています。
この指摘はまさにその通りだなと感じました。Chromebook導入の最大の壁のひとつが「既存のExcelファイルとの互換性」ですが、そもそも「固定レイアウトのExcelファイルをやりとりする文化」自体を変えていかないと根本解決にはなりません。国や他の自治体からの調査票がExcel前提で送られてくるという外的要因は、一自治体の努力だけでは解決が難しい。ここは今後、国全体で取り組むべき課題ですよね。
コスト面|Microsoft 365 E5相当と比べて約5割で実現
質疑応答で出たコスト比較の回答が非常に参考になります。
岐阜市の速水氏から従来環境と比較したコスト効果について質問があり、吉崎氏はこう回答しています。
「スタッフには、安くてもフィットしない部門はあり、安いからといって使いにくさを強要するわけにはいかないので、コストの話は最後にしなさいと言っている」
このスタンスが素晴らしいですよね。コスト削減が先行して、現場の使い勝手が犠牲になるのは本末転倒です。
そのうえで、「Microsoft 365のE5ライセンス相当の環境を構築する場合と比べて約5割で済んだ。1台約6万5000円のChromebookがあったからこそ実現できた」と明かしています。
M365 E5相当の環境が約半額で実現というのは、かなりのインパクトです。Chromebookの端末コストの安さ(1台約6.5万円)はもちろんですが、Chrome Enterprise PremiumやGoogle Workspaceを組み合わせたトータルコストで比較しても半額に収まるというのは、他の自治体にとっても大きな参考材料になるはずです。
まとめ|舞鶴市の事例から見えるChromebook導入のポイント
舞鶴市の報告から見えてきたポイントを整理します。
導入の概要としては、2024年4月に検討開始、2か月で意思決定、9月に事業者選定、2025年に全庁展開と、わずか1年足らずで実運用を実現しています。ChromebookをメインにしつつWindows端末を各課1台残す「共存型」の構成で、セキュリティはCEP+EDR+NDRによるXDR環境を構築しました。
成果としては、「どこでもオフィス」の実現、Google Meetの文字起こし・共同編集の定着、A4用紙購入枚数の約38%削減、コストはM365 E5相当比で約5割、という具体的な数字が出ています。
課題としては、国からの調査票などExcelファイルの互換性問題が顕在化しており、Cameyo by Googleなどのアプリケーション仮想化で対応を研究中です。
個人的に、舞鶴市の事例は自治体Chromebook導入のモデルケースになると感じました。特に「コストの話は最後にしなさい」というスタンスでありながら結果的にM365 E5比で約5割のコスト削減を実現したこと、BCP対策を含めた「インターネットだけでどうにかする」という設計思想、そしてkintone+NotebookLMなど既存ツールも活用した現実的な移行支援の仕組みが印象的でした。
Chromebookは教育現場(GIGAスクール)の端末というイメージがまだ強いですが、こうして自治体の業務端末としても着実に広がっています。1台約6.5万円でセキュリティも機動力もコストも満たせるという実績は、今後ほかの自治体にも大きな影響を与えそうですよね。
引き続き、自治体でのChromebook活用事例はウォッチしていきます。
参考リンク
今回の記事の参照元
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- Google Workspace ブログ「舞鶴市、『日本一働きやすい市役所』実現に向けて、ChromeOS、Chrome Enterprise Premium、Google Workspace、Gemini を全庁採用」
- レバテックラボ「舞鶴市の技術好き職員がGoogle WorkspaceとChromebookへの全庁移行を実現するまで」
- 電算システム 導入事例「舞鶴市役所」
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